川村健一郎 日本映画の制作・研究部門専門家理事

教育現場から考える日本映画

撮影所に受け継がれて来た日本の映画制作

 かつての日本映画を支えた撮影所は、商品としての映画を大量生産するだけでなく、映画の作り手を育成するという教育的役割も担っていました。しかし、撮影所システムが機能しなくなった現在では、その教育的役割を大学や専門学校が担っています。近年は、とりわけ全国の大学に映像制作教育を扱う学部、学科、専攻が増加しました。
立命館大学映像学部もそうした流れの中で誕生した学部であり、大学の裏手にかつて撮影所が数多くあったという好立地をいかし、松竹撮影所内に当大学の学生が使える撮影スタジオを建設しました。こうした活動の一方で、授業の一環として、京都の街の映画館と連携し、映画上映会や子供向け映像ワークショップなどを、学生主体で企画・運営しています。
映画制作の教育環境の整備によって、日本映画の明日を支える、プロフェッショナルが育つバックボーンができると信じています。

夏目漱石と同じように、黒澤明を

 大学教育機関に映画が数多くでてきているのは大変喜ばしいことですが、一方で、小中学校の義務教育時期では残念ながら映画を学ぶ機会はほとんどありません。「あいうえお」から始まって古語にまで及ぶ日本語や、夏目漱石から村上春樹までの日本文学を、義務教育や高等学校の教育課程で教わるのに、日本映画について教わることは皆無に等しいといっても過言ではないでしょう。映画もまた物語表現であると考えれば、夏目漱石の作品と同じように、黒澤明の作品を観る機会があってもよいのではないでしょうか。映画制作に関わる教育環境や人材育成において、早急に教育プログラムを作っていくことも、日本で映画教育に関わる我々の使命と言えます。

いまこそ好機

 長い日本映画の歴史のなかで、いまこそ人材を育成する好機かもしれません。70-80年代に自主映画から始めた方たちがベテランの域に達し、何人かは後進の指導にあたっていますし、撮影所で技術を習得してきた方たちも高齢を迎えているとはいえ、現在でも活躍を続けていらっしゃいます。そして、現在の学生たちは、幼少期からビデオやインターネットがある社会に育ち、映画ばかりではない幅広い映像体験を得てきました。こうした様々な背景をもった人々が「映画」を通じて関わり合う――現在の映像学科創設ラッシュは、そうした環境が醸成されてきた現れとも言えるのではないでしょうか。  こうした教育の場で、映像に触れる若い人々の中から、将来を担う日本映画界の人材が育っていくことを期待しています。

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