日本画の保存・修復について

カテゴリーとしての日本画

今日、使われている日本画という名称は、明治以降に西洋画と区別するために使用されるようになったものです。では、西洋画と日本画の違いは何でしょう。端的に言えば、描くために使用する“素材”の違いです。もともと日本画は、千数百年前に、おもに仏教絵画を通して、中国大陸や朝鮮半島を経由しながら、その素材や技法が日本に伝えられました。土壁、麻、絹、紙、板などの上に、膠(ニカワ)を接着剤として、天然の岩石、土、貝殻、昆虫、植物、または化学的に合成した絵の具で描くものを日本画といいます。一方、西洋画は油絵とも言われ、接着剤として膠ではなく油を使用します。この接着剤の違いこそが、絵の内容から画法にまで大きく影響を及ぼすため、日本画というカテゴリーと、西洋画というカテゴリーが歴然と区分けされているのです。

長い歴史と伝統を有した絵画様式である日本画。しかし残念ながら、今日では中国大陸でも、朝鮮半島でも、その素材も技法も伝えられておらず、日本でのみ継承されている世界的にも、稀で貴重な絵画様式です。

劣化とたたかう日本画

日本画は、美しい四季の変化に富んだ日本の風土に育まれてきました。しかし、一方で高温多湿と低温乾燥を繰り返す日本の風土は、剥落やひび割れ、カビや害虫といった劣化の温床となり、日本画は完成した時点からすでに劣化が始まると言われています。そのため、日本画は定期的に修理を繰り返すことが必要となります。いわば日本画の歴史は、修理の歴史とともに歩んできたものと言えるのです。

しかし、文化財や芸術作品として認識される以前の日本画は、見栄えのみを重視した修理が施されることも多くありました。現在では、伝統的な修理技術を継承しながら、オリジナルの部分を尊重して、できるだけ文化財としての価値や芸術作品としての価値を保存する修理がおこなわれるようになっています。

また、コンピュータ技術を駆使した画像の保存や想定復元研究も、保存修復の今後を考える上で大いに期待できる方法でしょう。

世界発信される日本画と、その保存・修復技術

壁画など世界中の文化遺産の保存にも、日本画の修復技術が応用されています。今後、日本で受け継がれてきた保存・修復の技術は日本の枠を越え、ますます世界に活躍する場を拡げることでしょう。世界の先人が残した芸術作品を、人類の後世に継承する文化財保存の現場にも、日本画の修復技術や理念がしっかりと活きているのです。

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